夜の裂け目。思い出して悲しくなる。川の字に並んで寝て、安心して、最強の心持ちだったこと。そんなふうに、頼りにして、受け止めてもらえていると思えていたら、感謝を捧げて、温かいものが交流出来ていると信じられていたら、良かった。「両親を大切に」。「親が与えてくれた、当たり前じゃないことに感謝して」。それが、甘くて、幻想だから、わたしにも手に入ると思ってしまった。努力すれば獲得できると!それは、わたしの問題ですか!その境地に至れないのは、わたしの問題ですか!ふわふわのぬいぐるみにまち針がいつもたくさん入ってるみたいな。炊き立てのご飯に、いつもガラスの破片が入ってるみたいな。この世で一番の安心と、一番の温もりを、不信と一緒でなければ受け取れないようにしてしまったのはあなただよ。世界も、そんなところだと思った。でもそうじゃなかった。世界は、あなたが教えてくれたようではなかったんだよ。わたしはあなたがわたしの頭に組んだ回路を、分解して、正しく世界を享受できるように組み直すことに、必要なものを受け取って、感謝して生きて、人を信用することを恐れないでいるようにするまでに、大変な時間をかけたんだよ。世界は、全然、あなたが教えたようではなかったし、あなたが恐れたようではなかったし、わたしはあなたが思うような人ではなかったよ。あなたが、わたしの幼少期にかけた呪い、洗脳、それは繰り返しわたしを投げやりにさせた、繰り返し力を奪った、カウンセリングに何年も通った、それはあなたがわたしに与えるものと、どうやって自分を分離するかを学ぶために、わたしは本当に努力した。努力して、努力し続けた。それが本当に甘くて美しいから、それを「いらない」と思えるまでに、とても時間がかかったんだよね。幻想を、自分の人生から捨ててしまえるまでに諦める覚悟が、なかなか持ちきれなかったんだよね。そのくらい魅力的だったし、歩いていけると思ったんだよね、現在地から、夢の寝室まで。でもわたしは、「今」に目を瞑るのを止めた。「今」のわたしに対して目を瞑るのを止めた。現実を、ちゃんと見ようと、そして、それが甘い未来に続かないことを受け入れる、そういう世界線を引き受けた。だって、そこに両足をつけることでしか、どこにも行き着くことができないから。最後まで、心が繋がらなかった。役割を演じてだけ機能する家族。寂しいね。だけど、ずっと、最初からずっと、物心ついてもずっと、そうだったよね。わたしだけがそれを指摘し、わたしだけがそれを問題だと思ってる。わたしだけがそれを不満に思い、わたしだけがそれを罪悪だと思っている。子供の魂に。だけど、世界中にそんな子供たちはたくさんいる。いくらでもいる。誰とも心が繋がらない、「繋がらない」と信じている子供。心をひらなかなければ、子供の心と繋がれないんだよ。後先の心配をしながら、子供と今の時間を享受することはできないんだよ。自分を信頼して、握りしめた手をひらかなくちゃ、子供が味わってるものが心に入って来れないんだよ。もっと頑なな心を壊して、勇気を出して、嫌われたり、恥ずかしいと思われたり、情けないと思われることに堂々として、幼いわたしの目線で、一緒に世界を楽しめば良かったんだよ。季節の色や、移り変わる光、飛び回る小さなもの、闇を破る声、明るいものを信じる気持ち。今からでもやってごらんよ。あなたの近くにいる孫はギフトなんだよ。あなたに、頑なになった心を壊して、みずみずしい本来の働きを取り戻すきっかけをプレゼントしてくれる存在だよ。一緒に、同じ目線で見るんだよ。味わうのだよ。それらはただただ、甘い、ギフトなんだよ、この世界からの。ジャッジすべきものでなく。あなたは今幸せ?多分、あなたは、あなたが考える「幸せ」の方法を自分に当てはめていて、それを実行して生きている。それで、あなたは今幸せ?わたしは、あなたのいる環境では幸せにならない。あなたの当てはめている方法では、わたしは本当に幸せになれなかった。そこでは、どんどん幸せから逸れていった。わたしは、あなたのいる環境では幸せになれない。幸せだと感じられない。それが答えだ。それは、あなたが悪いのでも、わたしが悪いのでもない。違う人間だというだけなんだよ。違うテーマを生きる人間。あなたは、あなたが受け取ったものの延長線上の今を生きている。わたしは、自分が受け取ったものを、持ち続けるか、捨てるか、言語化して繰り返し問うてきた先の今を生きている。それは、勉強して、時代背景を勉強して、価値観の変化を勉強して、倫理観を勉強して、文化を比較勉強して、深層に問い続ける時間をたくさん持ち続けた結果だ。ああ、だからわたしは悪口、いくらでも言えるよ。嫌味もいくらでも言えるよ。あなたが悔しがる真実をいくらでも言える。それは、あなたがわたしに与えてくれた「不一致」の数だけあるんだが、あなたが自分の過去を整理して、わたしに不必要なものを濾過して渡さないようにできなかったのは、あなたの選択した行動だが、だがそれは善でも悪でもない、あなたの人間の成熟度の単なる反映だということが分かっている。虚栄を磨くこと。内側の誠実さをひとつひとつ小さく積み続けるより。あなたにとっては価値があっても、わたしにとっては害悪だった。その場面でわたしに持ち出せる良心はない。それはわたしの魂をひどく傷つける。それがなんだか、わたしも良く知ってるよ。それに価値を感じる心情を知ってるよ。わたしはそこで生まれた。それで育てられた。そうして、布団から起き上がれないくらいになったんだから。そこから、自分がそうでないようになるために、大変な時間をかけた。今も過程だ。わたしとあなたは違う人間だったんだ。わたしとあなたの欠落は、違う形をしていた。あなたは存在の欠落なら、わたしは共感の欠落。わたしが過去の自分の体験を人に話すたびに、追体験して、どろどろした負の感情が、灰汁のように表面に浮かんで、消えない。果たしてこれはいいことなんだろうか?わたしはまだ不自由なんだろうか。わたしの感情が自由になることはあるのだろうか。がっかりしながら、ぐったりした体を横たえて、消耗した心にピアノを弾かせて、「この、灰汁が沸く感じは、明日も明後日もは続かない。だから、今、それを味わうのはいいことなんだ」って、思うことにする。
